INTERVIEW
『ストライカー”らしく”生きる』~海外で30歳までストライカーとして生き抜いた男の、キャリアの歩み方、生き方~Vol.1
PROFILE
斎藤 陽介|EASY PRODUCTION株式会社 Yousuke_Saito
1988年、東京都世田谷区で生まれ。横浜Fマリノスユースから、2007年にトップチームに昇格し、プロデビュー。その後当時JFLのツエーゲン金沢を経て、海外挑戦。シンガポール、ラトビア、ロシア、ベラルーシ、オーストラリア、エストニアにおいてストライカーとして活躍。引退後はEASY PRODUCTION株式会社にて、映像配信事業に携わる。
PROFILE
斎藤 陽介|EASY PRODUCTION株式会社 Yousuke_Saito
1988年、東京都世田谷区で生まれ。横浜Fマリノスユースから、2007年にトップチームに昇格し、プロデビュー。その後当時JFLのツエーゲン金沢を経て、海外挑戦。シンガポール、ラトビア、ロシア、ベラルーシ、オーストラリア、エストニアにおいてストライカーとして活躍。引退後はEASY PRODUCTION株式会社にて、映像配信事業に携わる。
【はじめに】
今回インタビューを受けてくれたのは、斎藤陽介さん。1988年、東京都世田谷区出身。横浜Fマリノスユースから、トップチームに昇格し、プロデビュー。その後、当時JFLのツエーゲン金沢を経て、以降引退までの7年間、海外で生き抜いてきた。
シンガポール、ラトビア、ロシア、ベラルーシ、オーストラリア、エストニア、、、、
その他多くの国を渡り歩いてきた斎藤陽介さん。『ストライカー』という得点を取ることでしか評価されない、特異なポジションで、それも異国の地で、大きな”覚悟”を持って生き抜いてきた。
横浜FマリノスユースからTOPチーム昇格という、いわゆる”超”がつくほどのサッカーエリートと言えるプロキャリアをスタートしたのち、過酷な環境を生き抜いた彼が、セカンドキャリアを今、どう生きているのか。そして、その生きるエネルギー、突破口になっているものは何なのか。
現役時代は『点を取ることだけを考えていた』と言い切る彼がどのようにその後のキャリアを築いてきたのか、あらゆる角度からインタビューをさせてもらった。
インタビュー:鈴木崇文
話者:斎藤陽介さん
編集:GO
今回のインタビュアーは、鈴木崇文。東京学芸大学卒業後はFC町田ゼルビアを皮切りに、プロとしてキャリアを歩み、現在はJLINEを運営する株式会社アスリートバリューのCEO。
高校生時代の2005年岡山国体では、少年男子神奈川県代表として、陽介さんと共闘した間柄だ。インタビューの中から、陽介さん本人の生きざまもさることながら、ひとりの元アスリートとしての、キャリアの歩み方、生き様が垣間見えた気がした。
厳しいプロの中で生き残る術を身に着けたストライカーは、アスリートとしてのキャリアを終えても今なお、そのストライカーとしての生き様において、キャリアを築いていくのか。そんなことを感じさせてくれたインタビューであった。
第一話
『海外でストライカーとして生き抜いてきた男は果たして今、何をして生きているのか。』
鈴木:
では、さっそくインタビューをさせてもらいたいんですけど、、あまり硬くならずに、ラフな感じでお願いします(笑)
陽介さん:
わかりました(笑)
鈴木:
早速といってはなんなんですが、引退後の今って、どんな仕事をされてるんですか??
陽介さん:
一言でいうと、スポーツの映像制作に携わる仕事をさせていただいてますね。今の会社では、直近だとラ・リーガ(サッカースペインリーグ)の日本語実況の制作も請け負ったりしています。
バルセロナやレアルマドリードなどの試合の中継に日本語の実況を入れるっていう仕事をしていますね。
ほかにもサッカーでいうと、自分自身も高校生時代に出ていた、高円宮杯(高校年代の最高峰の大会)だとか、Fリーグ(フットサル)WEリーグ(女子サッカー)もそうですし、今後はJリーグに関わる仕事もさせていただく予定です。
プロ野球も、各球団の保有するファームチームで12球団中、10球団の中継制作に携わらせていただいていますし、その他にも、バスケットボールのBリーグだと、B1・B2の数チームであったり、卓球のTリーグやバレーボールのVリーグ、格闘技など国内におけるスポーツ中継を多く手がけています。
自分自身がやったことがないスポーツも多いので、自分から知りにいき、そのスポーツの魅力を伝えるために勉強しながらやらせてもらっています。
鈴木:
えーそんなに(笑)すごい。具体的な業務レベルでいうとどんなことを??
陽介さん:
うーん、まあ本当に何でもって感じですけど(笑)もちろん見積もりも作ったりするし、中継の構成も作ったりするし、実際に現場にも行きますね!
大枠でいうと、ディレクターとしてって感じですかね。カメラマンの方に現場で指示を出したりしながら、映像を作ります。試合中だと、リプレイもこのタイミングで出す、など判断して、チームとして実行に移していきます。
本当、試合の映像を自ら作るみたいな。構成含めて全部ですね。
それまでは何気なく映像を見ていたんですけど、今はこのタイミングで選手をクローズアップしたり、ファンを映したり、っていうのを考えて、判断したりもしますね。
鈴木:
えー!すごい! それってある程度試合の前に構成を決めている??
陽介さん:
そうですね。野球だと、ある程度の型はあったりするんですね。ピッチャーが投げる前に広い画で見せて、打った瞬間にボールを追いかけるカメラに移って、ボールが戻ってきたら打った人に寄って、みたいに。
もちろんいろんなことが起こるのがスポーツなので、僕も崇文さんもプロ選手だったので分かると思いますけど、何が起こるかわからないんですよね!もうLIVEなんで。
だから、しっかりとした準備と、クイックに対応できるレスポンス力は必要かなと思っていますね。
鈴木:
面白そうだけど、難しそう!(笑)
陽介さん:
いや、本当に面白いですよ!面白いです。
中継が始まる前も、自分が現役時代のような強度ではないかもしれませんが、一定程度の緊張感、そして、必要な準備っていうのはしっかりするようにしていますね。そうしなければ、みてくださっている方にも伝わらないと思うし、それくらいしっかりエネルギーを注いで向き合っています。
なんていうか、緊張感とか準備という部分では、ある意味現役時代の延長線上にいる感じかもしれません。
サッカー選手としての経験が、今に生きていることはあるのか??
鈴木:
なるほど。
今、現役時代の延長線って言葉があったと思うんですけど、サッカー選手としての経験が生きている部分もあります??
陽介さん:
それは、非常にありますね。うん、ありますね。
選手時代も、やっぱり結果を出すためには準備が一番大切だし、練習も自分が納得するまでしっかりやって、その上でピッチに立つ。自信を持って臨むことが大切じゃないですか。
それは仕事も一緒だと思います。準備、抜けがないかの確認とか。あとはやっぱり、チームとして動いてるので、コミュニケーションも大切ですしね。
僕の場合は、海外でのプレーも長かったので、自分からどんな人ともコミュニケーションをとらないといけなかったし、そういう姿勢というか、必要になってくる周囲との関わりは、現役時代と一緒だなって本当に思いますし、当時の経験が生きているかなとは感じますね。
鈴木:
そうなんだ。(感心している様子の鈴木。)
あ、今の仕事での ”準備” にあたるものってどういうものがありますかね??
陽介さん:
資料作りもそうですし、カメラ位置のプラン、機材の準備も含め、やることはたくさんあるんですよね。それこそ、はじめて触れるスポーツなんかは、事前にもちろん勉強もしますし。
関わるスポーツに興味をもって、映像をみて、そのスポーツを知ったり、注目選手を把握したり、見どころとか、どこが魅力なのかを理解したりとかはしっかりしますね!
自分たちもサッカーの映像を見ながら、イマジネーションを高めたりしていたわけじゃないですか?(笑)似てますよね!だから本当に現役時代の延長っぽい感覚はありますね。
鈴木:
なるほど。ちなみにさっき、コミュニケーションの部分で現役時代の経験が生きてるって話しがあったと思うんだけど、その部分で言うと、どのようなコミュニケーションを心がけているとか、みたいなのって何かありますか??
陽介さん:
そうですね〜。。
それこそ、現地のフリーのカメラマンさんと仕事をすることも多いんですね、社員でメンバーを組むこともあるんですけど。
それで中継中はずっとインカムをつけながら、そのカメラマンさんたちに指示出しなんかもするわけですけど、年上の方も多いんです。
そこで、いきなり一方的な指示を出しても、やっぱりどうやっても『この若造め!』みたいな気持ちにはなっちゃうと思うんですよね。(笑)
鈴木:
あ~~なりそう(笑)
陽介さん:
なので、事前に自分のプランとかそういったものをしっかり伝えるようにしてますね、それで全然変わってくるんで。あと最終手段は、自分、サッカー選手でした!マリノスでプレーしてました!って話をしたりとか。(笑)
鈴木:
それで円滑に進んだりするもの???(笑)
陽介さん:
そんなときもありますね(笑)ただ、ほとんど使わないですけどね(笑)
鈴木:
なるほどね(笑)本当に最後の手段的な感じってことで(笑)
なんか話聞いて思うのは、大切なのは ”自己開示” というか、自分や、自分の考えを知ってもらうところっていう部分な気がしたんだけど、サッカー選手の時代からそういったことは意識していた??
陽介さん:
そうですね。サッカー選手時代は、本当にもう、FW一本でやっていたので、練習から点を取ることしか考えていなかったんですけど、
そのためには、練習中からとにかく欲しいところへのパスを要求することはずっとやっていた気がしますね。練習から点をとらないと出れないですし。
鈴木:
あ~~。そんな印象がすごくある(笑)
陽介さん:
それは崇文さんが出し手側の人だからでしょうね(笑)だいぶ要求してたと思います。(笑)
このタイミングで裏(相手の守備陣の裏のスペース)に出して!とか。
鈴木:
そうだよね(笑)
でもそれくらいハッキリしてくれると、受け取る側は少し怖さはあるかもしれないけど、分かりやすさや、やりやすさはきっとあるよね!
陽介さん:
そうですよね。でもあとはもちろん、伝え方はやっぱり選手時代とは少し変えていて、
コミュニケーションの取り方自体は、選手の時のようにガンガン要求するような感じではなく、もう少しうまくなっているとは思いますけど(笑)
鈴木:
ま~、どうやったら気持ちよく相手が取り組めるかな、とか、考えるよね。特に年齢が上というか、経験のある方とご一緒することも多いんだろうから。
陽介さん:
そうですそうです。それこそ僕だとサッカー選手上がりでまだ4〜5年しか経っていないですけど、その道20〜30年みたいな方も多くいるので、本当にリスペクトの気持ちを持ちながら、仕事をさせてもらっている感じですね。
GO第一話後記:
“自我と調和のバランス感覚”
これが素晴らしく、絶妙な人なんだなとインタビューを聞いていて強く感じることとなった。
俺が俺が!という強烈な自我を持つのがストライカーという人種。ましてや海外で生き抜いてきたならなおさら。一見、一般社会とは相容れない要素を全身にまとっているような印象であった。でも結論、違った。
なんともうまくアジャストしている。自我をどこか醸し出しながらも、そのエネルギーを担保したまま、社会に溶け込んでいる、そんな印象である。それは、ある種、自分らしく生きれているから、なのかもしれない。
ではどのようにすれば自分らしく生きれるのか。
そのヒントが、この後のインタビューに隠されている気がする。