INTERVIEW

INTERVIEW
2024.04.18

【第三話】”変われる強さ” 日高慶太 | FC大阪

日高慶太|FC大阪

PROFILE

日高慶太|FC大阪 KEITA_HIDAKA

日高慶太(ひだか・けいた)1990年東京都世田谷区出身。横浜Fマリノスの下部組織を経て、桐蔭学園へ進学し、2006年にはU16日本代表に選出される。その後は慶應大学に進み、関東大学サッカーリーグで活躍。その活躍が認められ、2012年からJリーガーとなり、モンテディオ山形、FC町田ゼルビア、ブラウブリッツ秋田、ヴァンラーレ八戸でプレー。 その後、東京ユナイテッドFCへ移籍すると同時にビジネスシーンでも活動を開始。サッカープレーヤーとしての活動も継続し、2021年には当時JFLのFC大阪からのオファーを受け、JFLでプレー。2023年シーズンにFC大阪がJ3に昇格したことで、再びJリーガーとしてピッチに戻ってきた、異色の経歴を持つ。

日高慶太|FC大阪

PROFILE

日高慶太|FC大阪 KEITA_HIDAKA

日高慶太(ひだか・けいた)1990年東京都世田谷区出身。横浜Fマリノスの下部組織を経て、桐蔭学園へ進学し、2006年にはU16日本代表に選出される。その後は慶應大学に進み、関東大学サッカーリーグで活躍。その活躍が認められ、2012年からJリーガーとなり、モンテディオ山形、FC町田ゼルビア、ブラウブリッツ秋田、ヴァンラーレ八戸でプレー。 その後、東京ユナイテッドFCへ移籍すると同時にビジネスシーンでも活動を開始。サッカープレーヤーとしての活動も継続し、2021年には当時JFLのFC大阪からのオファーを受け、JFLでプレー。2023年シーズンにFC大阪がJ3に昇格したことで、再びJリーガーとしてピッチに戻ってきた、異色の経歴を持つ。

第三話
あの時何が起こっていたのか。そして、セカンドキャリアについて


鈴木:

これまでのサッカーキャリアの中で印象に残っているものってありますかね??


慶太さん:
うーんそうだなー、難しいな。。一つ。。契約満了になった話も印象に残ってますし、いろいろありますけど、ポジティブなもので言うと、モンテディオ山形のときに、プレーオフに進出して、J1に昇格したことも印象に残ってますね。


6位から勝ち上がったんですけど、あの最後に山岸さん(現U16日本代表ゴールキーパーコーチ:当時モンテディオ山形ゴールキーパーで、プレーオフ準決勝でロスタイムにコーナーキックに攻め上がり勝ち越しゴールを決めた。)がヘディングを決めた試合とか。


※【J30ベストアウォーズ BEST GOAL】ヘディングシュート部門にノミネートされている


佐藤:

あー!覚えてます!


慶太さん:
その後に、ブラウブリッツ秋田に移籍して、2年目でJ3優勝できたことも印象に残っています。チームにライセンスが無くて当時昇格ができなかったんですけど、その年もなんか、ものすごく印象に残ってますね。


その年の前半戦はずっと試合に出られなかったんですね。選手として屈辱的な時間でコーチの人と言い合いになってしまったのもその時期だったんですけど(苦笑)


でも、自分なりに努力を欠かさず、最後チームが優勝がかかるような試合で力になれるようにっていう思いでずーっと準備していたんです。
それで、最終戦の前の時点で3位だったんですけど、1位2位が直接対決で、そこが引き分けて、僕たちが勝ったら優勝っていう状況だったんです。


その試合は結局3-0で勝ったんですけど、自分自身も出場できて、得点もできたんです。それがそのシーズン初ゴールだったんですけど。
その時にやっぱり、腐らず取り組む事が大事だなと思いましたし、チームとしても昇格という目標は失われても、チームでまとまって優勝することができたので、その経験は本当に印象に残ってますね。

様々な葛藤を抱えながらプレーしていた当時。自分自身を保っていたものとは。


鈴木:
昇格っていうものがなくなった時点でモチベーションも落ちてしまいそうなものだけど、、


慶太さん:
そうですよね。目の前の目標がブレてしまうと組織としてモチベーションを保ち続けるのは難しいなと感じていました。ただ、当時を振り返ると、目の前の一つ一つのトレーニングや日々の積み上げが他のクラブと比べたらレベルが高かったんだろうなって思ってて、目標ももちろん大事なんですけど、それがないからと言って、純粋にサッカー選手として一日一日積み上げることができれば、自ずとそういう結果が待ってるんだなって感じましたね。


鈴木:
なるほど。監督のマネジメントもうまかったのもありますかね??


慶太さん:
うーん、僕自身はなかなかシーズン通して出場機会も多くなかったので、複雑ではありますけど(笑)そういう部分もあったんじゃないかとは思いますね。あとはフロントと現場の関係性であったり、そういったものはうまくいってたのかなと感じますね。


ん~、あとそうだな、、あとは山形を再契約になった話とか、いろいろあるんですけど、いったんこの話が印象に残ったということで(笑)


鈴木:
え、ちなみにどういった経緯で再契約に??聞きたいです(笑)


慶太さん:
モンテディオ山形で、J1に昇格したタイミングで契約満了になって、当時の監督の石崎さん(現ヴァンラーレ八戸監督)が一人一人と面談をしてくれたんですけど、僕自身石崎さんにすごく成長させてもらえたと実感していたので「もう一年、石崎さんのもとでやりたかったです」って言っていたんですよね。


それでそのあと、トライアウトにも出て他のチームから話をいただいたりしたんですが、山形の補強状況だったりいろんなことが重なって再契約をさせてもらうことになったんです。


鈴木:
これは、出していい話ですかね??(笑)


慶太さん:
(笑)
なので結局それもあって、僕自身J1を経験できたんですよね。ナビスコカップ(現ルヴァンカップ)出場が主体ではありましたけど、その経験はやっぱり大きくて。J1から地域リーグまですべて経験ができたことにもつながるので。


あの石崎さんとの場があったからそうなっていたとは言いきれないんですが、言ってみるもんだなとは思います(笑)もちろん、本当に思っていたから言ったんですけどね。


鈴木:
本当、何があるかわからないですね!(笑)


ではでは、終盤になってきたのですが、次の質問をさせてください。これまでのサッカーでのキャリア、ビジネスでのキャリア通じて多くの経験をされてきたと思いますが、今後の目標に関してはどう考えてますか??

様々なカテゴリーで、様々なシュチュエーションを経験してきた慶太さん。これからについて。


慶太さん:

そうですね、選手としては、終わり方はすごく大事だと思っていて。納得できる形で終えたいっていうのがまずあります。自分が選手としてチームに貢献できる状態でクラブの目標を達成したいなと。


逆に、崇文さんって引退するときはどんな感じだったんですか??どんな気持ちで??


鈴木:
あ、僕ですか(笑)そうだな、、なんだろ、やめたときは全く後悔がないって思っていたんですよね。辞めたときが、、
31歳かな。辞めた理由自体は、次のキャリアに少なからず不安も感じていたし、シフトチェンジしたほうが良いとも感じていたタイミングだったから。


選手としての目標があって、それを達成したからっていうよりは、そういう自分の人生を考えたときに、やめるタイミングだって思ったというか、そんな感じだったかな。


でも、今思うと、もっと続けててもよかったなって思いますね。体も全然動く状態ではあったから。


慶太さん:
そうですよね。全然動いてましたよね。


鈴木:

でもやっぱり当時は視野も狭くて、世の中のことも知らないから、次に行かないと!っていう気持ちが本当に大きかったなと。


慶太さん:
なんかじゃあ、あれですかね、当時別の仕事というか副業というか、そういった部分で収入だったり社会とのつながりがあれば、もうちょっと引退が伸びていたかなと思ったりしますかね??


鈴木:
間違いなくそう思いますね。そう思うし、そういったことをJLINEアカデミーで提供していければって思っています。それが結局サッカー選手としてのキャリアを伸ばすことにもつながるし、自分もより成長できただろうなって思うから。。。。


いや、自分の話はいいのいいの。(笑)人生という長い目で見るとどうですか??どういったことをしていきたいとか。


慶太さん:
そうですね。スポーツって本当に最高だと思っているし、アスリート含めて、その力を本当に信じているんですよね。ワールドカップを見て、熱狂して感動してっていうことが起こったりするわけで。


その価値をもっと、いろんなところに届けていきたいんです。今は具体的に目標設定をしているわけではないんですけど、いろんな人がスポーツと出会ってよかった、自分の人生が豊かになったって思えるような社会にしていきたいと思っています。

スポーツやアスリートの”価値”をもっともっと社会に届けていきたいという慶太さん。これから様々なことに取り組んでいくことであろう。ともに、頑張っていきたい。

鈴木:
なるほど。そうすると、今やっている会社も一つの手段であって、なんか他にどんどん違ったことにも取り組んでいくっていう可能性はあるっていうイメージですかね??


慶太さん:
本当にそう思っています。今行っている事業も手段の一つであるし、もっと多様にアスリートやスポーツの価値を届ける場所や手段ってあると思うんですよね。


今は、採用っていう部分でアスリートと企業を繋ぐことがメインになっているかもしれないけれど、違った場所で、スポーツとはこれまで関係ない人がスポーツと繋がったり、企業がスポーツを通じて新しいことを始めたりとか、そんな機会を生み出していきたいですね。


鈴木:
なるほど、なるほど。これが、最後の質問なんですけど、Jリーガーがキャリアチェンジをしてセカンドキャリアを歩むとなった場合に、その波にしっかり乗るために、現役中にしておいたほうがよいと思うことってありますか??


慶太さん:
そうですねー。主に三つかなと思いますね。一つ目は、やっぱり、選手も現役の時代から学ぶ意識や情報をとりに行く意識は持ち続けてほしいし、必要なことだと思いますね。


二つ目は、”言語化”する力をつける、ですね。Jリーガーやアスリートって、すごく貴重な経験をしてきているはずなんですけど、言葉で語れない選手がすごく多いなって感じるんです。


鈴木:
うんうん。


慶太さん:
きっとJリーガーも、サッカーを始めたときって、みんながみんな最初から飛びぬけてうまかったわけではなくて、例えばうまい選手の真似をしたりだとか、ビデオを見て研究したりとか、それをもとに自分でトライして、もう一回振り返ってみて、そしてまた成長していくっていうことを繰り返してきたからこそ、そこまでたどり着いたり、長く現役をできていたり、ある程度の成果をあげたりっていうことができているはずだと思うんです。


もちろん、能力一本でそこまでたどり着いたっていう人もいるとは思うんですけど。これって、ちゃんと具体的に言語化できれば、違う世界でも転用できると思っていて、多分ビジネスの世界でも全部一緒だと思うんです。


例えばキャリアを変えて、営業になりましたと。であるならば、できる営業マンの先輩がいれば、その人がどのように話しているとか、どういった時間の使い方をしているだとか、そういうことを真似てみて、繰り返しやってみる、ということだと思うんですよね。


だから、自分自身がサッカーで成長するためにどういう努力をしてきて、どういった取り組みをしてきたかっていうことを、ちゃんと自分で認識して、自分の言葉で語れるようにするってすごく大事かなと思っています。


鈴木:
いや、本当それ大事ですね。


慶太さん:
三つ目は、他の世界の人たちと触れ合う機会をつくるっていうことですね、一つ目と少しかぶってしまう意味合いはあるんですが。

やっぱり、まずサッカー界っていうのはかなり特殊な世界であるということをまず自覚すること。とはいえ、社会の中で言うと一つの業界であるので、外から見たときにどう見えているかっていうことを知ることって大切だと思うんです。それによって、自分自身の世界や視野も広がると思うので。


鈴木:
ありがとうございます。特に二つ目で言うと、自分自身のことや自身の価値を理解できていないケースってよくあるなと感じます。無意識にやってしまっている部分があると思うんですが、少しもったいないなと。


慶太さん:
そうですね、実際に転職を支援していると、何て言うのかな、、手遅れではないですけど、このタイミングだと自分たちがサポートできることって限られてくるなって感じることも多いんですよね。例えば、書類を作ってもらっても、うまく言葉でまとめられないとか。


鈴木:

うんうん。


慶太さん:
ベースの人としての当たり前の教養的なものは、周りのサポートっていうよりかは、自分から学んで獲得しておかないといけないよねっていうことは強く感じますね。


鈴木:

なるほど。当たり前の教養。


慶太さん:
アスリートだからって話ではないのかもしれないけど、当たり前のことができないと、次の段階に進んでいこうって思っても、じゃあ企業からしたら、本当に欲しい人材になりえるのかって考えたときに難しいと思うんですよね。あとは、じゃあ転職活動を始めて1か月2か月で身につくかっていうとそれも違うと思うんですよね。


こちら側が見栄えを整えることはできるかもしれないけど、本当に企業に対して価値を発揮できる人材ですとはなかなか言い難い自分もいるのも事実で。だから教育とセットだと持ってて、崇文さんがやっているようなことも一つだと思いますよね。


鈴木:
なるほど、なるほど。でもそれって競技にも間違いなく生きてきますよね。恐らく今言ってくれたことがうまくできていない人は、サッカーの能力に頼ってそこまでたどり着いた人が多くて、競技人生を伸ばすためにも、学んで、自分で自分のことを理解して、言葉にできることってすごく大事な気がしますよね。


慶太さん:
そうだと思います。相乗効果は間違いなくあると思うんですよね。特にサッカー界は昔と比べると、頭もよくないと活躍できない世界になってきてるってすごく感じるんですよね。賢さがないと。


鈴木:
なるほどなー。時代は変わってきているわけだ。


編集後記:


終始、落ち着いた様子で言葉を紡いでくれた、慶太さん。地域リーグから、J3、J2、J1とカテゴリーを経験する中で、心身ともに厳しいせめぎあいを生き抜いてきたであろう、その経験が醸し出す空気感を纏っているようであった。

とても謙虚に、とても素直に、話をしていただくことができた。今も最前線に身を置きながら、驚くほど俯瞰的にJリーガーを語ってくれる一面もあった。

今後、慶太さんのようにより俯瞰的に考え、社会の中で、競技性の側面はもちろん、それ以外の部分でも社会の中で価値を発揮していくJリーガーも生まれていくことと思う。それは、社会の中で非常にポジティブなことであろう。

また、様々な局面に出会う中で、周囲の声であったり、自分の感じるままに変わることを恐れない、”変われる強さ” これはアスリートのみならずこれからのビジネスマンにも通ずる、成長するための重要な種なのだと、強く感じることができた。