INTERVIEW

INTERVIEW
2024.08.06

【第二話】|”水産業日本一を目指す”富田康仁

富田 康仁|株式会社富田商店

PROFILE

富田 康仁|株式会社富田商店 yasuhito_tomita

富田康仁(とみた・やすひと)1990年愛知県生まれ。北陸大学を経て、2013年よりツエーゲン金沢へ入団。2017年シーズンまで同クラブで活躍し、翌シーズンはアスルクラロ沼津へ移籍。その年の12月現役引退を発表。 引退後は、水産業に身を置き、サラリーマンとして修行を積んだ後、現在は、家業である株式会社富田商店を継ぎ、総売上20億円のグループ会社の3代目として活躍中。また水産に特化した人材会社も設立している。

富田 康仁|株式会社富田商店

PROFILE

富田 康仁|株式会社富田商店 yasuhito_tomita

富田康仁(とみた・やすひと)1990年愛知県生まれ。北陸大学を経て、2013年よりツエーゲン金沢へ入団。2017年シーズンまで同クラブで活躍し、翌シーズンはアスルクラロ沼津へ移籍。その年の12月現役引退を発表。 引退後は、水産業に身を置き、サラリーマンとして修行を積んだ後、現在は、家業である株式会社富田商店を継ぎ、総売上20億円のグループ会社の3代目として活躍中。また水産に特化した人材会社も設立している。

Jリーガーから水産業へ

鈴木
次は引退を決めてからとその後のストーリーなどを伺いたいと思います。

今はご実家の会社を継がれていると伺っていますが、引退を決めたきっかけや、その後のサラリーマン生活から現在に至るまでの経緯などを教えていただけますか?

富田:
そうですね。金沢の後は、J3のアスルクラロ沼津に移籍し、そこで働きながらサッカーを続けていました。当時はサッカーとそれ以外の仕事で生計を立ていました。

というのも、金沢を退団後は、引退後のことを見据えて働きながらサッカーができる環境を探していて、そいう意味で沼津は、ほとんどの選手が仕事をしながらプレーしていたので、望んだ通りの環境ではあったのかなと思っています。

鈴木:
そうなんですね。実際にはどのような仕事をされていたのですか?

富田
児童養護施設で放課後デイサービスをしていました。

ただ、それが僕のイメージしていた社会人の仕事としては少し違うというのを感じまして。

鈴木:
そうなんですね。具体的にどう違かったのですか?

富田

引退後に水産業の仕事に就くことは決めていた中で、現役の間にいわゆるサラリーマンの仕事をやってみたいなという思いがあったんですけど、この仕事は子供たちと「わーっ」て楽しむのがメインの業務だったんですよ。

とても楽しいし、やりがいのある仕事だったんですけど、僕が求めているものとは少し違かったなと。

沼津では試合に出られていたので、現役を続けていくこともできるなという感覚はあったのですが、自分の引退後の姿を想像した時に、このまま続けるのは良くないなと思い、最終戦の前日に引退を決意し、社会人として新しい道を歩むことにしました。

鈴木
そうだったんですね。

放課後デイサービスもとてもやりがいのある仕事だとは思いますけど、ご自身の将来を考えたときに繋がりが見えにくかったのですね。

ちなみにその後、どのようにして水産業界に入られたのですか?

富田:
引退後は大きな水産系の上場企業に入ろうと決めていました。

父の取引先の紹介で、中部水産という会社を紹介していただき、選考を受けました。

鈴木
そうなんですね。なぜすぐにご実家の会社に入らず、他の企業に入社したのですか?

富田
自分の力をつけるためです。

いきなり実家に入ると、世間知らずのままのドラ息子になってしまうなと感じていまして。

なので、上場企業で商流や下積みの経験を通じて成長したいと思い、中部水産を選択しました。

鈴木:
そういうことだったんですね。

ちなみに、大学生のときは不動産業界に興味を持っていたと仰っていましたが、だいぶ業界が変わったなと。

その時から何か心情に変化があったのですか?

富田
特に大きな変化はありませんよ。

もともと実家を継ぐつもりでしたが、まずは自分の力をつけたいと考えていて、とにかく大変そうな不動産業界で営業として稼ぐ力を身につけようと思っていました。

ただ、Jリーガーになって引退が30歳近くなったということもあり、水産業に直結する仕事に就く必要があると感じました。

鈴木
なるほどです。確かに新卒と30歳ではキャリアステップが全然違うから選択も必然的に変わりますもんね。

Jリーガーという肩書きが通用しない世界

鈴木

ここからは実際に水産業に入ってからのことをお伺いしたいのですが、キャリアチェンジしてみて感じたことや実際のご経験を教えてください。

富田:

まず、サッカー選手から水産業に転職したのは僕が初めてだったんですよ。

この業界のパイオニアになってやる。絶対成功してやるって思いで飛び込みました。

それで、実際入社してみて、元Jリーガーっていう肩書きもあったので、多少のリスペクトあるのかなーと思っていたのですが、全くありませんでしたね。会社のパートのジムのおばちゃんにまでボロクソ言われていました。笑

けど、そのおかげで変なプライドを持たずに仕事に馴染んでいくことができましたね。

鈴木:

それは逆にありがたいですね。

怒られるのは嫌かとは思いますが、変なプライドがあると成長の邪魔になったり、それこそ勘違いして人の話を聞けなくなってしまいますから。

富田:

そうですね。

実際は少しあったんですよ。俺ならできるっていう変な自信が。

ただ、一瞬で打ち砕かれましたね。笑

鈴木:

そうだったんですね。笑

ちなみにサッカーの話は全然しなかったんですか?

富田:

ほとんどしませんでしたね。というよりも、みんなサッカーについては全くわからなかったですね。

場所が名古屋だったので名古屋グランパスなら分かったかもしれませんが、僕の場合は違かったので。

それで、J2のクラブと説明すると、「稼げないんだろ。ふふふっ」って感じで少しバカにされるような感じでしたね。

なので、元Jリーガーだからってリスペクトしてくれる人はほとんどいませんでしたね。

良い意味でフラットに接してくれるので、変なプライドはなくなりましたね。

目標は日本一の水産会社

鈴木:

具体的に現在の仕事はどのようなことをやるのですか?

水産業ってあまり馴染みがない人が多くてイメージ湧きにくいのではないかなと思いまして。

富田:

水産業の商流からお話ししますね。

ざっくりと分けると4つに分かれていて、まずは、例えばいくらなどを扱っている大きなメーカーや貿易をやっている会社があります。

そこから「大卸」と呼ばれる、メーカーから大量に仕入れる卸しが入ります。それこそ、数十トン単位で買いつけたりも規模感です。

その次に「仲卸」と呼ばれる、大卸から仕入れた商品をスーパーや飲食店に販売する卸しが入ります。

そして最後に皆さんが目にするような小売店や飲食店に商品が流れる。

このような流れとなっています。

そして、僕が引退後に入社した企業は、「大卸」と呼ばれる立ち位置の会社で、今の僕の会社では「仲卸」と呼ばれる立ち位置の会社です。

なので今は、漁師さんや食品メーカーさんから鮮度抜群の魚や冷凍された海産物などを大量に仕入れ、スーパーマーケットや飲食店様に販売をする卸売業を営んでおります。

鈴木:

なるほど。前職での経験を活かしながら家業に戻ったんですね。

ちなみに家業を継がれて、今が代表という立場かと思いますが、将来的にご自身の会社をどうしていきたいと考えていますか?

富田

はい。今は水産業日本一を掲げてやっています。

実は名古屋には既に売上規模で約180億円の日本一の会社があるんですよ。

うちはグループでまだ20億円で、なんとか10倍以上の売り上げを作っていこうと頑張っています。

そのために目の前では、採用、特に新卒採用に力を入れており、今年は、5人の大卒新卒が入社してくれています。

鈴木

目標日本一。そして新卒5人採用はすごいですね。

富田

はい、今は非常に順調です。

目標である日本一になるには、他社との差別化が大事で、うちの場合は若い新卒をガンガン採用していこうと考えています。

また、特に水産業は若手不足が深刻な業界なので、僕の会社が採用の実績やその後の活躍の実績を作って行って、水産業全体を盛り上げる役目になりたいなとも思っています。

鈴木

ちなみに、富田さんが考える水産業の魅力は何ですか?

富田

子どもたちが食べたいものランキングの上位には必ず寿司がありますよね。それを扱っていることがまず大きな魅力です。

そして、日本人は絶対に魚を食べます。刺身や焼き物など、魚は日本人の食卓に欠かせないものです。

それを扱えるのは大きな魅力です。

鈴木

確かに魚は多くの人がに食べますし、お寿司は特に好きな人多いですよね。

富田

そうなんですよ。

他にもマグロの解体ショーなどもやっているのですが、直接お客様と接することができて笑顔を見られることは大きなやりがいとなっていますね。

鈴木

最後の質問になるんですけど、富田さんが考えるJリーガーの強み、サッカーを通じて培った力って何だと思いますか?

富田

うーん、難しい質問ですね。

自分で言うのも微妙な感じではありますが、Jリーガーになるのは非常に狭き門です。

Jリーガーの皆さんって、その狭き門を努力と運で突破してきたわけです。

これには絶対に努力が伴っていますし、それなりの苦労もあります。

さらに、Jリーガーになってからも試合に出続けるためには厳しい競争を生き抜かなければならない。

これはいわゆるビジネスパーソンの方の競争以上に厳しい環境なのかなと思います。

なので、自発的な努力や、目標設定とそれに向かっての行動力などにおいて、かなり高いレベルで実行されてきている人が多くて、人それぞれにはなると思うんですけど、いい素材を持っている人は多いと思います。

すみません。具体的に何かって言うのは思い当たらないのですが。

鈴木

確かにそうですよね。

いつ試合に出られなくなるかわからないプレッシャーの中で毎日戦い続けるって、経験できないですからね。

富田

そうですね、その貴重な経験が一番培ったことかなと思いますし、現役の皆さんも自信を持って欲しいですね。

第二話後記

富田さんからは、素直さと力強さを感じるインタビューの時間で、私の印象ではアタッカーの選手に多いタイプの人柄だなと思いながら話を伺っていました。

この素養は、代表を務めている現在の会社でも存分に活かされているのだろうなと思っており、特に新卒の方を5名採用されたというエピソードの時に強く感じました。

水産業では1名採用するのも大変という話の中で、5名というのは他社にない魅力があるということで、それが富田さんの素直さと力強さなのではないかなと思ってります。

今後の水産業をリードしていくことを楽しみにさせてもらう、そんなお時間でした。