INTERVIEW

INTERVIEW
2024.09.08

【第一話】”三ッ田啓希さん(元ヴァンラーレ八戸)に迫る”保育・教育業界とサッカー界の架け橋を目指して

三ッ田 啓希|株式会社JOYKU

PROFILE

三ッ田 啓希|株式会社JOYKU HARUKI_MITSUDA

三ッ田啓希(みつだ はるき)1997年12月22日 埼玉県出身。 2019年の中央大学在学時に松本山雅FCとの契約を結び、その年の4月に特別指定選手としてルヴァンカップで公式戦デビューを飾り、翌年2020年に正式に松本山雅に入団。 その後、FC岐阜やヴァンラーレ八戸などでプレーし、2023年シーズンで現役を引退。 引退後のセカンドキャリアとしては、株式会社JOYKUという保育士と保育園を結ぶマッチングプラットフォームを運営するスタートアップ企業に入社し、新たなキャリアを歩んでいる。

三ッ田 啓希|株式会社JOYKU

PROFILE

三ッ田 啓希|株式会社JOYKU HARUKI_MITSUDA

三ッ田啓希(みつだ はるき)1997年12月22日 埼玉県出身。 2019年の中央大学在学時に松本山雅FCとの契約を結び、その年の4月に特別指定選手としてルヴァンカップで公式戦デビューを飾り、翌年2020年に正式に松本山雅に入団。 その後、FC岐阜やヴァンラーレ八戸などでプレーし、2023年シーズンで現役を引退。 引退後のセカンドキャリアとしては、株式会社JOYKUという保育士と保育園を結ぶマッチングプラットフォームを運営するスタートアップ企業に入社し、新たなキャリアを歩んでいる。

鈴木
早速始めさせていただきますね。

現在、具体的にどういった会社でどういったお仕事をされているか、ちょっと最初にお伺いしてもいいですか?

三ッ田さん:
はい、今はですね、IT系のスタートアップで、保育士さんと保育園をつなぐマッチングプラットフォームを運営している株式会社JOYKUという会社に勤めています。

仕事内容としては、人材と保育園のマッチングで、求職者側の獲得と保育園側への営業を繰り返し行い、それぞれに対してカスタマーサポートも行っている感じですね。

あとは、スキルワーカー*という特殊技能を持った人を保育園や学童に派遣するということもやってます。

*スキルワーカーとは、平日の昼間に保育園や学童で特技(Jリーガであればサッカー、その他指導される方の得意な領域)を活かして働く方々のこと。

鈴木
なるほど。派遣っていうところでいくと、保育園や学童の時間の中に習い事を入れるみたいな感じですかね?

三ッ田さん
スキルワーカーと呼んでいる部分に関してはそうですね。

また、保育士さんの働き方のニーズが変わってきているので、フルタイムでの常勤が難しい場合には、スポットでの勤務や短時間勤務を提案しています。

世の中的に保育士さんが足りていない現状を踏まえて、潜在的な保育士さんをうまくマッチングさせることが僕の役目かなと思っています。

鈴木
なるほどですね。

ちなみに具体的な業務内容はどういったものですか?

三ッ田さん
僕自身、スタートアップ企業なので、プロダクトの市場調査や新規ユーザーの獲得を提案しつつ、スキルワーカーとしての業務も行います。

営業活動やカスタマーサポート、資料作成、データ管理、マーケティングまで何でもやっていますね。

その中で、僕の会社はリモートワークがメインなのでタスク管理やそもそも仕事を入れていくのが大変ですね。

会社の規模も小さいので、新人担当のような役割もなく、自分でやることを見つけなければならず、アンテナを張って必要なことを拾いに行く姿勢、自走する姿勢が求められています。

鈴木
確かに右も左もわからない中で、自分で仕事を取りに行くのはとても難しいですよね。

自走するということが大事だとおっしゃっていましたが、サッカー選手時代の経験が今に生きていることってありますか?

三ッ田さん
少し話はそれますが、僕の場合、サッカー選手時代のベクトルって、チームではなく自分の成長だったと思うんです。

ただ、今の僕の会社の場合、会社の成長の先に自分の成長が含まれてきます。

まずは会社の業績を伸ばすことを求められる。結果として自身も成長している。

これが普通のサイクルなんですけど、選手の場合は自分が成長しないと試合には出られない。

さらには、試合に出られない選手に対して、手厚くフォローするということはどうしても難しいというのがプロの世界です。

そして試合に出られなかったら翌年は契約がなくなってしまう。

そうなった時に自然と自走しなくては生き残っていけない環境が整っていると思うんです。

アプローチ方法や考え方は、自分か会社かどちらでもいいのかなと思うのですが、結局は自分の与えられた役割を理解して、そこで能動的に動くことが大事かなと。

それが自走するっていうことかなと思います。

鈴木

まさにですよね。けど、今は右も左もわからない環境なわけじゃないですか?

その中でいきなり自走するってかなり難しいというか、そもそも何やるんだ?みたいになりませんか?

三ッ田さん:

そうですね。

まず最初は自分が何ができるか、何ができないかの情報が全然ないので、とにかく数をこなしてみることが大切かなと思っています。

やってみた上で、自分ができることとできないことの距離感がわかってくると思います。

それはサッカーでも同じで、チームの人間も自分に対して何ができて何ができないかをある程度わかっているので、一緒にプレーしていく中で自分の特性も徐々にわかってくるはずです。

鈴木

たくさん数をこなしてみて、わからないことを知ることが大事ということですね。

三ッ田さん:

そうですね。

サッカーをやっていた時は、わからないことを知ることで、やらなければいけないことと自分との距離感が少しずつわかってくると思っていて、それに対して何が必要かというアプローチをしていくことが大事だと思っていました。

これは仕事でも同じで、例えば営業ができない、目標の立て方がわからないという場合、まずインプットから始めています。

僕の場合は、本や資料をたくさん読み、その中から自分に合った方法を探し出します。

そして、適宜実行してみて成果が出たものを選び、自分を知っていくというやり方を取ります。

これはサッカーでも同じで、自分の目標とする選手やプレースタイルを見つけて真似して、自分なりのトレーニング方法を見つけるようにしてました。

鈴木

なるほど。

ただ、わかりやすいですけど、大量のインプットを先にして頭を整理するのって結構難しくないですか?

三ッ田さん

そうですね。話すことはできても、実際にできているかというと全然そんなことはありません。

そう言われると、本や資料からのインプットも重要ですが、実際にやってみて現場からのフィードバックを得ることで、より自分に染み込むようになりますし、大事ですよね。

これもサッカーに置き換えてみると、やっぱりサッカーの一番成長の機会は試合ですよね。

試合での失敗が自分の成長に繋がります。

ただ、僕の場合、プロになってから試合に出られることが少なかったので、練習のための練習ではなく、公式戦のための練習にするというのもかなり意識していました。

どうしてもサブ組だとスタメン側の動きに合わせて練習が組み立てられるので、本当に自分が成長できているのか、スタメン組への対応だけがうまくなっていないか?

というのは意識していましたし、難しさを感じていました。

鈴木:

なるほど。

そう言われると本当にサッカーと似ている部分が多いですね。

生の経験から得られることが一番成長に繋がる。

三ッ田さん:

そうです。

要素をうまく抽象化して転換することができれば、どんな仕事でも対応できると思っていて、自分の成長と会社の成長のために、常に自分をアップデートし続けることを意識して日々過ごしています。

とはいえ、僕の場合は入社して日が浅く、まだ結果を出せていないので、今後の課題は結果を出していくことですね。

入社の経緯

鈴木

引退後の初めてのキャリアとして株式会社JOYKUを選択したと思うんですけども、そこを選択するまでに、どういうプロセスを経て今の職に至ったのかっていうのをちょっとお伺いできたらと思いますけども、いかがですか?

三ッ田さん
いやー、それはすごい色々考えましたよ。

多分それは鈴木さんもすごくわかってると思いますけど。

鈴木
あははは。

三ッ田さん
僕の場合、まず色んな人に相談しましたね。

サッカー界だけじゃなくて、大学や高校の時の先輩だったり、兄弟の幼馴染みだったり、自分と違うフィールドで戦ってきた人たちの意見を聞いてってことをしました。

自分に対して忖度なしに必要なことを言ってくれる人が幸い周りに結構いたので、そういう人たちに、自分の現状を話してフィードバックをもらって選んでいきました。

自分が思っている自分と、周りから見えている自分っていうのはやっぱり乖離があって、そこをうまくすり合わせて、僕が今本当に求めているものは何かっていうのを見つけていきましたね。

自分自身、起業したい思いが強かったんですけど、フィードバックをもらっていく中で、解像度が低い部分が多いと感じました。

やりたいという意思はあっても、それに対しての本気度や市場のニーズまでちゃんと調べられていなかったんです。

ここから更に何ヶ月も考え抜いて起業するというのを考えた時に、自分にはまだそれができないと感じました。

その中で、今取れる最大限のリスクを考えた時に、大手企業を受けるという選択肢もありましたが、もし入社できたとして、そこに居座り続けたくなってしまうのではないかという気がしちゃいまして。

大手が悪いという話ではなく、良くも悪くも来年どうなっているかわからない。

そんな環境に身を置いて自分をアップデートしていく、それが今できる最大限にリスクを犯してチャレンジすることなんじゃないかと思い、ベンチャーを軸に就職先を探していました。

そういったインプットをしていた中で、たまたま今の会社の話が知り合いを通じて舞い込んできて、これは行ってみようという流れで今の会社に決めました。

鈴木
そうだったんですね。ちなみにそういう考えになるまでも、右行ったり左行ったりと、悩みながらだったかと思うのですが、大体何人くらいの人に話を聞いたんですか?

三ッ田さん
信頼できる人たちには10人から15人くらいですかね。

その中でも自分にとってメンターのような存在、昔からの知り合いで忖度なしに正直な意見を言ってくれる人が3人ほどいたので、その人達にまずは会いに行きました。

鈴木
なるほど。手当たり次第に相談するというよりは、信頼できる方、さらには正直に意見を言ってくれる方々に相談されていたんですね。

三ッ田さん
そうですね。

自分が求めている言葉だけを聞いてしまうと、本当に必要なことが見えてこなくなるなと思っていて。

普段から密に連絡をとるわけではないけど、大事な時に相談できる人が周りに数人いることは大事だなと実感しました。

鈴木
確かに、悩んだ時に相談できる人がいるのは心強いですよね。

三ッ田さん
そうですね。

困った時にすぐに連絡して相談できる人がいるのは本当に大きな支えになります。

Jリーガーのキャリアの受け皿を作りたい

鈴木
まだ入社してそんなに時間が経ってない状況かと思いますけど、今後どうしていきたいかとか、ビジョンみたいなものってあったりしますかね?

三ッ田さん

まだ入ったばかりなので、長期的な自分がどうなっているかっていうのは全然わからないんですけど、今の会社においてやっていきたいビジョンとしては、

まず保育園と保育士さんをマッチングして、子供たちの機会格差をなくすというテーマをもっとスケールさせていくこと、まずは一都三県での存在感を大きくしていくのが目標です。

新規事業についてもいくつか考えていて、特にサッカー選手としてのキャリアを持っている人たちに対するサポートですね。

指導者の道を選ばなかった理由としては、やはりサッカーだけで生計を立てるのは難しいという現実があります。

特に家族がいると、その責任が大きいので収入の安定が求められます。

鈴木
具体的にはどのようなサポートを考えていますか?

三ッ田さん
例えば、サッカー選手が引退後に営業や保険、不動産などの分野に進むケースが多いのは、対人スキルがあるからだと言われますが、実際にはスキル云々ではなく、稼ぐためにそうせざるを得ない状況が多いと思います。

ただ、僕の考えているアプローチは、今まで培ってきた能力をそのまま活かせる場所を作ること。

具体的には引退後にサッカースクールなどで指導をされいてる方達が昼間の時間を有効活用できるように、保育園でのスキルワーカーとして働ける環境を提供しようと考えています。

鈴木
保育園でのスキルワーカーというのは具体的にどういう形ですか?

三ッ田さん
平日の昼間に保育園や学童で特技を活かして働くという形です。

例えば、サッカーの指導やダンス、野球など、スポーツのスキルを子供たちに教えることができます。

保育園や学童の時間を有効活用することで、夜や週末の指導だけでなく、昼間の時間も有効に使えるようになります。

小中学生の指導者の方って、どうしても学校の時間に影響を受けて夕方くらいからしか稼働できないので、保育園や学童の時間、午前やお昼頃に仕事できるのは、指導者の方にとってもいいのかなと思っています。

鈴木
なるほど、確かにそれだと昼間、特に午前中の空いている時間を有効に活用できますよね。

三ッ田さん
そうなんですよ。

なので、僕のビジョンとしては、まずは一都三県での存在感を強化し、その後、全国に広げていきたいと考えています。

その上で、スキルワーカーとしての働き方を広めることで、元サッカー選手たちがサッカー界にとどまらず、他の分野でも活躍できるような環境を作っていきたいと考えています。

僕の思いとしては、サッカー界に貢献してきた人が引退後もサッカー界に直接貢献できることが大事だと思っていて、引退後に稼げないという理由でJリーガーだった人たちが離れていくのは、サッカー界にとって大きな損失だと思っています。

なので、スキルワーカーという事業をスケールさせていき、元Jリーガーの受け皿にするために今の会社で頑張ろうと思っています。

第一話後記

三ッ田さんとの対話を通じて、彼がいかに自走力を発揮しながら新たなキャリアに挑戦しているかを強く感じたました。

元Jリーガーとしての経験を活かし、現状の課題に対して主体的に取り組む姿勢は非常に印象的で、特に、サッカー選手時代に培った「自分の成長」を追求する姿勢が、スタートアップという環境でも存分に発揮されていく、されているのだろうなと感じました。

第二話では現役時代のお話し、Jリーガーになるまでのプロセスや、主観と客観の違いから来る自己肯定感との戦いについて伺いましたので、ぜひご覧ください。