INTERVIEW

INTERVIEW
2024.12.28

【第二話】プロとして常に理想を目指し、日々努力する先にあるもの/修行智仁

修行智仁|FC今治

PROFILE

修行智仁|FC今治 TOMOHITO _SHUGYO

修行智仁(しゅうぎょう ともひと) 1984年6月29日大阪府大阪市出身。 立命館大学卒業後、当時JFLのガイナーレ鳥取に入団。その後、FC町田ゼルビア、大分トリニータ、FC今治と計4クラブでプレーし、2024年シーズンをもって現役を引退。 在籍4クラブで5度のカテゴリー昇格の経験を持ち、選手やスタッフからの信頼の厚い選手として重宝された。

修行智仁|FC今治

PROFILE

修行智仁|FC今治 TOMOHITO _SHUGYO

修行智仁(しゅうぎょう ともひと) 1984年6月29日大阪府大阪市出身。 立命館大学卒業後、当時JFLのガイナーレ鳥取に入団。その後、FC町田ゼルビア、大分トリニータ、FC今治と計4クラブでプレーし、2024年シーズンをもって現役を引退。 在籍4クラブで5度のカテゴリー昇格の経験を持ち、選手やスタッフからの信頼の厚い選手として重宝された。

自分にとっての理想のゴールキーパーを完成させる

試合のウォーミングアップ前にサポーターの方々とグータッチしている様子

鈴木
これまでの経験を踏まえて、将来的にもっと磨きたいなと思うことはありますか?

修行さん

プレイヤーとしては、自分のゴールキーパーの理想の完成させることは常に追い求めてるかな。

鈴木

理想の完成ってできるんですか?

修行さん

”こういうゴールキーパーでいたいな”と思う自分の好きなゴールキーパー像を、この現役中に完成させたいなとは思っていて、それを追っかけてる。

鈴木

現実的な話だと、やっぱり肉体的には落ちてきているわけじゃないですか。

修行さん

でもね、肉体的にあんまり落ちてないんよね。

鈴木

そうなの?

修行さん

いや、落ちる部分もあるよ。でもトレーニングしてると伸びてる部分もめっちゃあるんよ。 去年より今年の方が動けてるとか。もちろん色んなガタは来てるのかもしれないけど、それは全然関係ない。

鈴木

そうなんだ。

修行さん

実際、理想のパフォーマンスが出せるかどうかは別として、そこを追っかけていってるっていうことがめっちゃ大事なわけよ。
実際それが表現できたかどうかは別として、表現できる瞬間があるだけでもいいわけよ。 
ずっとそれがやり続けられるわけじゃなくても、一瞬でも、”あ、今の自分の理想に近いな”とか。
そういうものを常に追いかけてるって感じ。

自分で納得して”ああ、修行っていうキーパーってこういうキーパーで終われたな”とか ”修行っていうキーパーはこういうキーパーだったよね”って、みんなに言ってもらえるようなものが完成して終えられたらいいなと思っているかな。

鈴木

じゃあ現役を引退する時は、それを完成させられた時ってことですね。

修行さん

それで引退できたら最高やね。やっぱりキーパーってこうあるべきよね、とかいうのを自分でもわかっていて、プレーでも表現できているなって思えたらいいよね。

鈴木

その終わり方ができたら最高ですよね。プレーヤーとして以外にも、在りたい姿というのはありますか?

修行さん

自分はほんまにかっこいいおじいちゃんになりたいねん。
顔がイケメンとかじゃなくて、生き方がかっこよくて、それが仕草として現れているような。80歳ぐらいになったとして、いい経験も悪い経験も、いろんな修羅場をくぐってきて、通り越したようなね。
サッカー以外の目標で言ったら、人間味溢れたかっこいいおじいちゃんになりたいってずっと言ってる。

日々を全力でやるからこそのご褒美がある

鈴木

プロサッカー選手として、ここまで目の前のことを全力でやり続けてこれた理由はなんですか?

修行さん

たまにご褒美があるんです。
苦しい時期に、めげずに歯食いしばって毎日の練習を頑張ったり、試合に出れない時期でも筋トレを頑張っておくとか。
そうやってその時やるべきことを考えてやっていると、ふとチャンスが来て、その試合で勝てたりする。
その時にこれまでやってきたことは間違ってなかったって思えるんですよね。

やってきたからこその結果が出た時の充実感とか、達成感がご褒美で。
それがわかっていると、次に同じ状況に追い込まれても、また同じようにコツコツやり続けるんですよね。
適当にやって結果が出ても、多分そこまでの達成感はないと思うけど、本当に全力で目の前のことをやり続けて得た喜びっていうのはやっぱり別格なので、そのご褒美の虜になっているのだと思います。 

鈴木

サッカー選手として結果を出すというのは、大変なことの方が多いですけど、その分リターンも大きいんでしょうね。

修行さん
そうだね。プレイヤーとして色んな人に見てもらって、そこで自分のプレーを発揮できるということ。
かつ、それで試合の勝利とか、いい試合に貢献できる喜びというのは、やっぱり何にも代えがたいなと思う。

鈴木

サッカーをやってきた人や、アスリートの方がビジネスシーンに行っても活躍される人が多いというのは、そういう成功体験を知っているからだと思います。
成功するまでの辛いことや、うまくいかないことがずっと続いても、その先にはその分の何にも代えがたい喜びがあるってわかってるから頑張れる人が多いんじゃないかなと思いました。

修行さん

やっぱりどんな仕事もそうだと思うし、そのご褒美があるのがわかっていると、その努力やしんどい思いをしていることも苦しくなくなってくるんよね。”これはご褒美来るぞ”と思いながら努力ができれば楽しいし、成功していくんだと思います。

大分トリニータでJ3優勝時の写真

鈴木

ちなみにこれまでで1番のご褒美って何でしたか?

修行さん

今までで 1番ね。。何個かあるけど、大分トリニータでJ3優勝した時かな。
自分はその前の年に大分に来たけど、その時はなかなか試合に出れずにいたし、さらにはチームもJ3に降格して。

自分の中では試合に出られなくても、J3に降格する前も含めて、J2昇格のためにずっと努力し続けてきたんよね。
そしたらラスト10試合くらいでやっとチャンスをもらって、そこからチームは勝ち続けて、最後昇格まで行った。
あれはなんか違うパワーも感じたよね。
何かのパワーに後押しされてたと思うくらい神がかっていた。
あの時に達成した時の喜びこそ、本当のご褒美やなと思ったし、間違ってなかったなって思ったね。

鈴木

その2年は、シュウさんの中で激動でしたよね。
しかもゼルビア町田から大分トリニータに移籍したら、入れ替え戦の相手は町田でしたもんね。

修行さん

それはもう、ほんま運命を感じたよ。
町田の昇格を目の前で見たとき”これはもう、大分をJ2に上げろ”と言われてるなと思った。
その為に改めて努力しよう、大分のためにやろうって思ったよね。

特別なことよりも当たり前なことをやる

鈴木

ここまではシュウさんの日頃の取り組みなどについてお話を伺いましたが、これからプロを目指したい子供達や学生の皆さんに伝えたいことはありますか?

修行さん

子供たちと接する中でも”どうやったらプロになれますか”という質問を多くの子供たちがぶつけてくれるんですよね。

いつも答え方に迷っていたんですけど、最近は自分の中の答えがはっきりしてきていて。
つまんない答えかもしれんけど、まず大前提に”こうなったら、これをやればプロになれる”という答えは絶対にないです。
そもそも質問自体が間違っている可能性があるぐらい。
まずこうやったらプロになれるっていうことは絶対ない。
仮にそういうのが存在するなら、それをやりさえすればみんながプロになれるわけだから。 
ただ、僕が唯一可能性が広がるなと思うのは、例えばプロになるためには、毎日お風呂上がりにゆっくりストレッチして、身体のケアをしてから寝ましょうと言ったとしても、たぶん今の子どもたちは”そんなんやってもプロにはなれないだろう”って思うと思うんですよね。

でも”そんなんやっても意味ないやん”ってみんなが言うことが、実は1番大事だと僕は思います。

例えば、「練習を毎日一生懸命にやりましょう」ってもうみんな言われ慣れてると思うんです。
だから”そんなんやってもプロになれへんやん。この練習をやったってプロにはなれへんよ”って、多分みんな思うと思うんですよね。
でも、みんなが”そんなんやっても”っていうことに、ヒントがあると僕は思うんです。

プロのサッカー選手になれる人というのは、サッカーをやっている人口の1%もないはずなんですよ。
だからこそ、みんながそうやって”そんなことをそこまでやっても意味がない”って言うようなことにこそ、アホみたいにこだわってやっていけば、可能性は広がるかもしれないですね。

それは親御さんに対しても同じで、自分の子供がプロになるためにサポートするのであれば、やっぱり食事と睡眠へのこだわりは本当に持つべきですね。

”そんなことしたって”って思う親御さんもたぶんいると思いますけど、みんなが”そんなこと”って思うことこそ大事にして欲しいですね。それが唯一の道かなと今は思っています。

みんな絶対にやらないですもん。


サッカーチームのコーチから毎日これやれって言われたとしても、9割以上はやらないです。
でも僕はやるんやって言って、小学生のころからコツコツコツコツ、毎日ずっとストレッチをしてきて、今でもやらない日はないです。

筋トレもそう。
そんな筋トレばっかりやっても意味ないって言われてきたし、”こんな疲れてるんやから休んだらええやん”とかも山ほど言われてきたよ。
でも、みんながやらないんだったら俺はやろうって思ってやってきた。

特別なすごいトレーニングをするとか、凄い技術が上手くなるようなトレーニングをするとかじゃなくて、誰にでもできる当たり前のことをずっと真剣にやり続けることが大事だということを伝えたいですね。

鈴木
プロになった人もそうですし、長く続けてる人は、何かしらずっと続けているものって絶対にありますよね。

修行さん

あると思う。即効性がなくてもコツコツと地味なことを当たり前に続けられるのは武器になると思うよ。

鈴木

さっきの、毎日を100%でやりきるというところにも繋がっていますね。

修行さん

そうだと思います。やり続けるって本当に簡単じゃないからね。
絶対にみんな続けられずに脱落していくからこそ、”自分は頑張るんだ”と思って、頑張って欲しいですね。

第二話後記

修行さんの言葉から、プロとして活躍し続けるために必要なことは「特別な才能」ではなく、「地道な努力を続ける力」だと強く感じました。 誰でもできることを、誰も続けられないレベルでやること。この言葉は、サッカー選手を目指す人だけでなく、様々な挑戦をする全ての人に必要なことだと思います。実はこの取材後に現役引退発表をされた修行さん。新たなキャリアでも活躍されることを楽しみにしています。