INTERVIEW

INTERVIEW
2023.04.07

【第二話】本業はエンジニア

下平 匠|南葛SC選手兼WEBエンジニア

PROFILE

下平 匠|南葛SC選手兼WEBエンジニア takumi_shimohira

大阪府箕面市出身。中学時代からガンバ大阪のアカデミーで育ちトップチームへ昇格。そこから、大宮アルディージャ、横浜F・マリノス、ジェフユナイテッド市原・千葉を経て、現在はエンジニアとして働きながら、南葛SCでプレーしている。

下平 匠|南葛SC選手兼WEBエンジニア

PROFILE

下平 匠|南葛SC選手兼WEBエンジニア takumi_shimohira

大阪府箕面市出身。中学時代からガンバ大阪のアカデミーで育ちトップチームへ昇格。そこから、大宮アルディージャ、横浜F・マリノス、ジェフユナイテッド市原・千葉を経て、現在はエンジニアとして働きながら、南葛SCでプレーしている。

キャリアにファーストもセカンドもない

ーセカンドキャリアという言葉は嫌だということも、以前言っていましたが、それはなぜでしょう?

人生は1回しかないのに、セカンドもサードもないんじゃないかということです。サッカー選手になりたくてなって、プロ生活は終わったけど、じゃあそれがファーストかは全然分からない。もしかしたら、これからの人生の方が豊かになるかもしれないし、安易にセカンドキャリアという言葉を使うのはあまり好きではないですね。

ーセカンドキャリアというと、サッカー選手時代が人生のピークだと決めつけているニュアンスを感じます。あくまでもキャリアチェンジ、ネクストキャリアの方が考え方としてはしっくりくるのかなと。

確かに。会社員の人が起業したり、業種が変わってもセカンドキャリアと言わないと思いますし、良い言葉が見つかって欲しいです。

Jリーガーではなくなったからこそできる経験

ー今年でJリーガーでなくなって3年目。サッカー以外のものに時間を使えるようになって、色んなことをやられていて、幅も広がっているのでは?

サッカーの記事を書かせてもらったり、南葛SCのスポンサーの所で1日店長をさせてもらったり、色々していますね。やっぱりJリーグとなると、選手はただ行くだけになりますが、今は自分で調整もします。文章も長く書くことなんてありませんでしたから、今後の仕事にも活きると思いますし、マリノスから離れたのに、またサポーターに記事を読んでもらえるのはすごくありがたいですよね。

ー個人スポンサー制度(南葛SCで行っているトレーニングウェアに選手別パートナーをつける施策。経費以外は、すべての収益が選手に還元される)なんて南葛SCに行ったからこそ出会ったと思うのですが、プロサッカー選手だったからこそ、より感謝しなければいけないなと思うような事もあったのでしょうね。

Jリーグの時のスポンサーは大きすぎるというか、1選手からすると遠い存在でした。南葛SCはもちろんJリーグと比べると規模も小さいですし、さらに個人スポンサーとなると人対人、僕達選手と企業さんという形になるので、応援の声もダイレクトに届きます。そういう人達と一緒に南葛SCを強くしたり、喜んでもらえるような成果を出していければと思います。

ー今の生活は、Jリーガー辞めた当初思ってたよりも相当楽しく過ごされているんじゃないですか?

なんとかなると常に思っているので、辞めた時も全く不安はなかったんですけど、毎日凄く充実していてありがたいですね。

ライフタイルの変化

ー家族との調整も、これから引退する選手は直面すると思うのですが、その辺りはいかがですか?

家族と過ごす時間はJリーグの時よりは少なくなりますし、それをどれだけ家族が理解してくれるか。普段からちゃんと接していれば特に問題はないと思いますけどね。むしろ、1個のミスで来年の契約がなくなったりするJリーグのプレッシャーを家族も少なからず感じていたみたいなので、シビアな所から離れられて嬉しいということは言っていました。南葛SCにプレッシャーがないわけではないですけどね。

ー今は本当に夜遅くまで仕事をして、帰宅したらみんな寝ているような生活ですか?

そうですね。今年は特に南葛SCの事務所でリモート作業をさせてもらったりしているので、平日は家に帰る日の方がむしろ少ないくらいです。1部屋を借りてベッドもあるので、そこで作業をして寝ています。

ー凄いですね。他にそういう選手は流石にいないですよね?

南葛SCではサッカー1本で食べている人、南葛SCで働きながらサッカーをしている人、別の会社で働きながら南葛SCでサッカーしている人、自分で起業している人という4パターンがあります。でも、今は別で仕事をしてるのは僕だけなんですよ。。

ーそれを辞めようとは思わなかったですか?

いや、1回も思った事がないですね。去年くらいまでは、僕のように他の会社で働いている人が結構いたのですが、練習時間が調整できなくて辞めてしまう選手もいたりしました。

自分が成長して、楽しく過ごしている姿を見せたい

ー今の仕事で魅力に感じているのはどんな所ですか?

もうすぐ始めて3年になるのですが、未だに自分で(コードを)書いて作ったものが動く楽しみはありますね。

ー3年経って、新しく挑戦したいことはありますか?

まだ全然1人前だと思ってないんで、そこはもちろん頑張りたいです。あとは、たまに現役の選手から相談が来たりするので、僕が楽しそうにしていて、そういう道もあるんだなと感じてくれれば良いかなと思います。

ー先輩、後輩達を見ていて、やはりJリーガーではなくなった後のことは、あまり考えていないようですか?

そうですね、なるべく考えないようにするんじゃないですかね。

ーでも不安に思ってる人はいると?

はい、間違いなくいると思います。

ー下平さん自身に不安はありましたか?

僕はずっと何とかなると思って生きてきたので。本当に周りに恵まれていて、どうにもならないということがなかったので、そうなった時に自分がどうするべきなのかをもっと考えないといけないかなとは思います。

SNSで培ったつながり

ー先ほど相談を受けているというお話がありましたが、ご自身ではいかがですか?

恥ずかしいとか人に知られたくないとか、そういう気持ちがないのであれば、一番簡単なのはTwitterなんかで「こんな事をやりたいんですけど一緒に考えてくれる人はいますか?」と投稿すること。今はSNSで色んな人と繋がれますし、僕もTwitterで仲良くなったり、仕事を頂いたり、個人スポンサーになってもらったことがあります。人の見極めはしないといけないですけど、自分がどういう事をしたい、知恵が欲しいという相談はSNSで無料で出来ますから。自分がどういう人間で、何を考えてるかは人に知ってもらった方が良いと思います。

ー平均引退年齢が25、6歳くらいと言われる中で、サッカー選手としての道を究めるのは当然ながら、将来を考えた方が良いというアドバイスは必要だと思いますか?

やりたい事、興味がある事があるんだったらやった方が良いと思います。やりたい事がないというのが難しいですよね。自分もそうだったので。その時に、これをやった方が良いよって言われても、自分にやる気がないとやらないと思います。だから、先輩や同僚がなにかをしているのを見て、自分もその気になったりとか、周りにどんな人がいるかが大事なのかなと感じます。人と会ったりするのは良いと思いますけど、誰彼構わず会っていてもなんの肥しにもならないですし、変な人が寄ってきたりもしますからね。

本業と思えなければ、新しい仕事は続かない

ーサッカーとエンジニアを両立している中で、これからのキャリアはどう思い描いていますか?

まずは本業なので、エンジニアとして1人前になる所が一番にあります。サッカーももちろんチームの目標を達成するために自分が出来る事を精一杯やっていきます。どれくらい続けるのか自分でも決めていないですが、1年1年を大切にして、その年出来る最大限の事をしていければいいと思います。

ー本業がエンジニアというのは、入社したときから?

そうですね。入った時からずっと言ってるつもりなんですけど。

ーそれは収入的な柱が変わるからですか?

いや、最初は南葛SCの方が多くて、今は逆転したくらいですかね。本業にしたいと思えないと続かないんですね。暗示をかけているつもりはないですが、どこかでJリーガーやプロサッカー選手への未練があると、どっちも中途半端になりそうな気はします。あとは、22、3歳で並行していたら、サッカーで上に行きたいという気持ちもあるかもしれないですけど、僕個人的にはもう1回Jに戻りたい気持ちは全くありません。南葛SCがJリーグへ行くことが、僕がサッカーをしている理由なので、それが達成出来れば、自分は試合に出れなくてもいいと思っています。