INTERVIEW

INTERVIEW
2023.04.07

【第一話】0から飛び込んだ先に見えてきたもの

下平 匠|南葛SC選手兼WEBエンジニア

PROFILE

下平 匠|南葛SC選手兼WEBエンジニア takumi_shimohira

大阪府箕面市出身。中学時代からガンバ大阪のアカデミーで育ちトップチームへ昇格。そこから、大宮アルディージャ、横浜F・マリノス、ジェフユナイテッド市原・千葉を経て、現在はエンジニアとして働きながら、南葛SCでプレーしている。

下平 匠|南葛SC選手兼WEBエンジニア

PROFILE

下平 匠|南葛SC選手兼WEBエンジニア takumi_shimohira

大阪府箕面市出身。中学時代からガンバ大阪のアカデミーで育ちトップチームへ昇格。そこから、大宮アルディージャ、横浜F・マリノス、ジェフユナイテッド市原・千葉を経て、現在はエンジニアとして働きながら、南葛SCでプレーしている。

今の自分で、どのようにチームに貢献するのか

ー現在、仕事とサッカーを両立されている中で、どんな生活をされているのでしょうか?

昨年までは、南葛SCの練習が夜だったので、平日は8時から17時まで仕事をし、終わったら練習へ向かっていました。活動日は平日3日と土日でしたね。今年からは練習が午前中に変わり、平日4日に増えたので、練習をしてから会社へ出社するか、リモートワークをさせてもらうかという感じです。時間的には、フルタイムで平日に40時間働いています。

ー練習後ということは、昼くらいから夜の8時、9時まで働いているということですね?

そうですね、はい。

ーもう、そのリズムには適応できましたか?

朝起きるのが最初はちょっときついなと感じましたけど、寝る時間などで調節できるので、特にあの時はきつかったみたいなことはないですね。

ーサッカー選手としての部分も、100%をプレーにかけていたという割合が変わると思います。そのバランスについてはいかがですか?

チームから求められていることを、自分の中で100%発揮することは変わりません。ただ、Jリーグでプレーしていた時と同じかと言われると、自分の年齢も上がっていますし、コンディション的にも出来ていないと自覚しています。そこは良いバランスを見つけつつ、尚且つその中で自分がチームにどう貢献出来るのかを考えながらやっています。

ーやっぱりパフォーマンスを上げることは難しくなってくるんですか?

今年35になる歳なので、今から向上していくことはもちろん難しいです。ただ、南葛SCがいるカテゴリーは、Jリーグから見ると下なので、チームの目標に対して自分がまだ貢献出来る事があるんじゃないかと思っています。だからサッカーも続けてるという事ですね。

“サッカー以外”にプライドはなかった

ープロサッカー選手でなくなる。大半の選手がJリーガーでなくなった時に現役引退をしていたのが、最近は下のカテゴリーに行く選手が増えています。その中で、下平さんはJリーガーではなくなることを、どう捉えていますか?    

ジェフを契約満了になって、最初はJリーグでチームを探していたのですが、なかなか見つからなくて、南葛SCに練習参加させてもらいました。その時に、凄く楽しそうにサッカーをしているのが印象的で、そういう中でサッカーをするのも悪くないなと思いつつ、Jリーグからのオファーを待ってる自分がいました。(移籍期間の)最後の最後、2月中旬くらいにJ2のチームからお話を貰ったんですが、自分があと何年プレーできるかということと、凄く楽しそうにしている南葛SCでできることを天秤にかけたら、もうJリーグにこだわらなくてもいいのかなという気持ちになりました。正直に自分がやりたい事をやる方が良いと思ったので、南葛でお世話になろうと決めましたね。

ーサッカーが仕事ではなくなった時、サッカーへの捉え方はどのように変化されましたか?

自分の中で、プロのサッカー選手というのは、サッカーだけで自分と家族が不自由ない生活を出来るというのが条件でした。それに値するような給料は正直南葛SCからは貰えなかったので、そういう意味ではプロサッカー選手ではなくなるのかなと思っていましたね。ただ、Jリーガーではなくなることに対する未練は全然ありませんでした。Jリーグからオファーがない時にはスーツを着て面接に行ったりもしていたので。自分がやってきたサッカーに対してはプライドがあるけど、それ以外の自分の知らない事に対しては別の次元で考えているので、特に嫌だということはなかったですね。

仕事とサッカーの共通点

ーサッカーは、仕事ではないけど趣味の域は明らかに超えてるわけじゃないですか。同じようなキャリアの選手は沢山いますけど、明確にセカンドキャリアと言えるわけではなく、どう言葉に表すのが適切なんでしょうね。

なんでしょうね。サッカーはまだ続けたいという気持ちがあって、趣味でしてるわけではないです。南葛SCというチームの目的を達成するためにやってるので、その目的に自分が何も貢献できなくなったら、それがきっとサッカーを辞める時です。なので自分の力がまだチームのためになる、自分がやりたいなと思ってる間は続けたいですね。一言で表すのは難しいです。

ーサッカーはみんな楽しいから始めて、続けていくわけじゃないですか。いつから自分の仕事と捉え、考えるようになりましたか?

ガンバの時に(チームメイトに)加地亮選手がいて、その姿勢を見て、楽しいだけじゃ駄目、仕事だというようなマインド、捉え方に変わりましたね。

ー仕事としてサッカーを考えた時に、取り組みはどう変わりましたか?

お客さんが見に来てくれたり、お客さんが落としてくれたお金で自分達は生活が出来ている。そう意識するようになって、普段からその人達の期待に応えるため、自分の出来る事をしっかりやろうと考えていました。   

       

ー今の仕事はサッカーと全く違っても、お金を貰ってクライアントの期待に応えるという意味では、少し似ている部分もあるのではないでしょうか?

そうですね。お客さん相手の仕事なので似てるといえば似ていますね。あとは、今の仕事も常に勉強というか新しいことがどんどん出てきます。サッカーで言ったら戦術が変わったり監督が変わったりしたら、それにアジャストしないといけないと思いますし。サッカーとエンジニアだけじゃなくて、サッカーを仕事として捉えるのであれば、(職種を問わず)そんなに大きな違いはないのかなと思います。

まずはやりたい事をやってみる

ーとは言え、飛び込んだ時は多分0だったと思うんですよ。パソコンもそんなに使ってこなかったと思うんですけど、どれくらい大変でしたか?

大変だったなという記憶は正直ありません。僕が働かせてもらってる会社の仕組みでは、最初1か月は自宅で教材を使い勉強して、1週間に1回社長と面談をします。2か月目から出社して働く形になるんですけど、調べて分からなかったら、先輩に聞けば教えてくれるので、1人で凄く辛いというのは一切感じた事がないですね。

ー机に座って、知らないことを勉強することについては?

最初は、ホームページの見た目の部分がどう動くかを勉強していました。こう(コードを)書けばこれが表示され、こう書けばこう動くということが分かり、今までそういう感覚でパソコンを触った事がなかったので凄く楽しかったです。仕組みなんか考えずにいたので、こうやって(ホームページが)出来ているんだとか、広告はこうなっているんだと知れることが面白いですね。

ー勉強そのものはお好きなんですか?

高校受験もほぼ勉強してないですし、大学も行っていないので勉強らしい勉強はしてきませんでした。ほぼ自分の興味がある事しかしてきていないです。エンジニアの仕事に僕の興味が向いたので、フィットした感じはしますね。

ーサッカー以外に熱中できるものが見つからなかったと話しているのをどこかで見たのですが、現役時代は実際そうだったわけじゃないですか。多分ほかの選手も趣味はあっても、サッカーと同じくらい、サッカー辞めてもいいくらい熱中するものは中々ないと思うんですよね。

そうですね。僕より下の世代は考え方が違ったりして分からないですけど、多分何をやっていいかわからない、やりたい事が見つからないという選手は多いと思います。僕も現役中に色々と調べる事はしていたのですが、実際にそれに手を伸ばして試してみることまではしていなかったので、もっとやってみたらよかったかなと思います。

ーサッカー選手としてパフォーマンスを上げる事に全てを注ぐけれども、サッカー以外の所での何かも見つけた方が良かったということですか?

少し前まで、サッカー以外の事を表立ってやると、サッカーのプレーが良くないときに叩かれるような風潮があったと思います。もちろん支障が出なければですけど、趣味だったり、それ以外にやりたい事があるのは当然なので。大企業の社長が仕事しかしてないかといったら、そんなわけないと思いますしね。あとは、アスリートは発信する力があるので、それをどんどん発信した方がいいと考えています。

仕事とサッカーを両立するから見える事

ー以前、自分をプロサッカー選手である事に甘えていたと表現されていたこともありましたよね?

やる事(サッカー)があったから、他の事はやらなくてもよかった、やらなくてもいいと思っていたと。言葉で表すのならそうですね。サッカーに対しては甘えていないけど、人生が80年、90年ある中でサッカーは短い期間しかできない。今しかできない事があるから、やらないといけない事、やっておいた方が良い事を先延ばしにしていた感じですかね。

ー地域リーグでサッカーを続けながら新しいキャリアに挑戦していくという現実を見て、可能性はどう感じてますか?

例えば、サッカーで違うポジションをしたら、そこで代表まで行くかもしれない。とりあえず、なんでもやってみないとわからないなと、働き出してからより感じるようになりました。

ー引退するとサッカースクールを開いたり、立ち上げることが多いですが、南葛SCの選手達は違う業種に飛び込みながら、サッカーを続けるという選択肢を示しているように見えます。

南葛SCとしては、Jリーグに上がって、さらに上へという目標があります。ただ、どういうチームかといったら、、サッカーももちろんしますし、選手が営業にいったり会社の運営を回している所にも価値はあると思います。僕は南葛SCでは働いていないんですけど、選手社員が10人以上います。同じカテゴリーの他のチームでも似た例はありますが、キャプテン翼というIPを持っているので注目されていますし、道しるべと言ったら大げさですが、それに近いかなと。サッカーをしたい思うのであれば続けれる所まで続ければいいと思いますし、その中で、自分がやりたい事や仕事を経験できる。働きながらサッカーをするのは、そういうことと相性がいい気がしますね。