INTERVIEW

INTERVIEW
2023.04.28

【第三話】大事なことは成功よりも成長 「理想像×インプット×アウトプット」成長を加速させる三角形

渡部 博文|レノファ山口代表取締役社長

PROFILE

渡部 博文|レノファ山口代表取締役社長 hirofumi_watanabe

山形県長井市出身。株式会社レノファ山口代表取締役社長、株式会社ESPORTES代表取締役社長。柏レイソル、栃木S C、ベガルタ仙台、ヴィッセル神戸、レノファ山口FCにて合計13年Jリーガーとしてキャリアを積んだ。引退後すぐにクラブ代表に就任するという異例のキャリアを歩んでいる。

渡部 博文|レノファ山口代表取締役社長

PROFILE

渡部 博文|レノファ山口代表取締役社長 hirofumi_watanabe

山形県長井市出身。株式会社レノファ山口代表取締役社長、株式会社ESPORTES代表取締役社長。柏レイソル、栃木S C、ベガルタ仙台、ヴィッセル神戸、レノファ山口FCにて合計13年Jリーガーとしてキャリアを積んだ。引退後すぐにクラブ代表に就任するという異例のキャリアを歩んでいる。

サッカー×エンタメ×山口らしさで差別化を

ーここまでは過去の話を聞いてきたんですけど、これからヒロ自身どうなっていきたい、クラブをどうしていきたいとか、考えていることを教えてもらえますか?

まずはチーム、今大体12億ぐらいの売り上げの規模なんだけど、それを18から20億ぐらいまで上げていきたいです。売り上げっていうのは凄く表面的な、外部の認知的な目標年ですけど、とにかく今構想としてあるのは新スタジアムを作ることです。

その新スタジアムだけじゃなくて近くの商業施設とか、それこそ福祉施設とか、農業とかいろいろなことを組み合わせて、サッカー以外のところでもしっかりと稼げる仕組みだったりとか、売り上げを上げる仕組みを作っていきたいです。

最終的には、サッカーに特化せず、このレノファがあることでこの地域が盛り上がること、他のスポーツも盛り上がることを目指して、自治体と企業、ファンサポーターの真ん中に自分たちがいる状況を作り出したいです。

ー地域のハブになるイメージですかね?

そういうイメージを持ちたいですね。あとはスタジアムにどれだけエンタメ要素や楽しめる体験を作れるかっていうのは、どのクラブも言われていることかもしれないけど、結局はそこが大事かなと。スタジアムにどのぐらい人が集まるかどうかでそのチームの価値や見られる数字が変わってきます。

ー試合だけでの集客って限界があるから、試合以外にも魅力を伝えることができたら色んな層の人が観に来る可能性もありますよね。

そうですね。勝ち負けは必ずあるから、そこは結果として置いておいて、エンタメ要素をどれだけ取り入れられるかが大事。

先日、スタジアムから片道1時間くらいかかるスポンサー企業様のところに訪問した際に、社長さんから、うちの従業員が試合を見に行った時が負け試合で、「帰り道が本当にテンションが下がって辛かった」と言われたんだよという話をされて、逆にピンときたんだよね。この時に楽しめるイベントや、選手とハイタッチができたとか、記憶に残る非日常体験を提供できたら、たとえ敗れたとしても「楽しかったよね」の言葉も思い出として残せるよなと。

だからこそ、クラブが目指す「ぶちアツいスタジアム」のなかには、勝つことは前提に考えつつも、初めて観戦した人でも勝敗に関わらずスタジアムで楽しめる体験をいかに提供できるかがキーワードになると思っています。

ー確かにそうですよね。今治とか、スタジアムでバーベキューができたりするところも最近ではありますもんね。

いや本当に。それこそサウナとかね、お風呂とかあっても面白い。この間山口の伊藤市長に、山口市って温泉や足湯が有名だから、スタジアムに足湯導入してくださいって提案したんだけど、「持ち運べるものがあるので検討します」と言っていただけたんですよ。

成長するためのトライアングル(理想像×インプット×アウトプット)

ークラブとしては新スタジアムを作るという目標があると思うのですが、ヒロ自身としては、長期的に見たときに何か目標にしていることはありますか。

まずは自分が理想とする人生設計と会社のビジョンや理念はリンクしていきたいと思っています。

Jリーガーがなぜプロになれたのかで言えば、まずは夢を持ち、「もっとうまくなりたい」という好奇心から成長するためのサイクルを自然にたくさん回してきたからだと思っています。そして僕はそのサイクルは三角形になっていると思っていて、その一番上にあるのは、なりたい自分や理想像。下にあるのはインプットとアウトプット。

たまになぜサッカー選手になれたのかを考えるときがあります。小さい頃は憧れの先輩やJリーガーの真似をして、ひたすらアウトプットしてきたなと。椅子に座ってテレビやスマホを見て学んだわけではなく、ピッチにでてひたすらアウトプットしてきた、それを周りの人よりも考えて行動してきたから、プロになれたと思うんです。

理想の自分になるために三角形のサイクルを早く回していくプロセスは、会社にとっても同じことが言えます。

新スタジアムだけでなく、まずはクラブとしてチーム強化、経営力など目指す理想像を可視化し、共感する仲間と一緒により早くトライアンドエラーを繰り返しながら成長し続けたいと思っています。

今後のJリーガーのキャリアのあり方

ーヒロ自身は現役選手をやりながら他にも事業を営んでいたりした背景があって、レノファの代表に就任したっていう状況なんだけど、Jリーガーの今後のキャリアのあり方についてどう考えていますか?

多様性とかよく言うけど、サッカー以外のところに目を向けられるような環境があったらいいなと思います。

今水戸さんもやっていて、うちでもできるかなと思っているのは、セカンドキャリアの支援っていう目的で、インターンを実施してみること。選手たちが数時間でも働く体験ができたら新たな気づきや自分の強み弱みが見えてくる。

スポンサー企業様の認知や交流を深める意味でも仕組みを作れたら、選手自身も新しい知見が得られ、サッカーにも活かされるのではないかと思います。

ーすごく大事だしあるといいですよね。もちろん引退後のことにも繋がるんだけど、競技にも絶対生きてくるなって個人的には思っていて。やっぱり今まで自分がサッカーだけやっていたのが、視座が上がってチームに対しての見方が変わったり、自分の新たな一面を発揮できたりもするんじゃないかなって思います。

確かに。どれだけ自分の内側に目を向けられるかはものすごく大事なこと。Jリーガーになった人たちって、うまくいかない時やきつい環境の時に自分を奮い立たせる力が強いのかなと思っています。
けど、うまくいかない時も必ずあって、そういう時は自分自身を知ることが大事。それも、自分だけではなく、コーチングなど外部のサポートを受けることも重要だと思っています。

なので、選手が未知の領域に挑戦するときには、自分自身の力と外部の力、2つの角度からサポートできる環境が作れたらいい循環に入るのではないかなと思いますし、その環境を作っていきたいなと思っています。

ー最後の質問です。現役のJリーガーの平均プレーできる年齢、引退年齢は25〜26歳と言われているけど、その時に戻れるとしたら、今のヒロからどんなアドバイスを送りたいですか?

もっと自分の描きたい未来を鮮明に描こう、と伝えたいです。具体的に。
目的地へ行く時に、電車で行くのか、飛行機で行くのか決まってなかったら行けないのと一緒で、そこが明確じゃないと内省もできないし、道順も分からない。そしてそれを知るためには情報収集を凄くしなきゃいけない。さらにマインドセットも大事。

描きたい未来がふわっとしていたらふわっとした人生にしかならないと思うので、できるだけ鮮明に描くために20代と30代は考え動き続ける必要があるなと思います。