INTERVIEW

INTERVIEW
2023.11.03

【武岡優斗】ずっと悩んだ痛みがあったからこそ。  ~現役時代に学んでおけばよかったこと~

武岡 優斗|セルソース株式会社

PROFILE

武岡 優斗|セルソース株式会社 yuto_takeoka

武岡優斗(たけおか・ゆうと)1986年6月24日、京都府出身 スピードを生かした縦への突破を武器に2009年J2のサガン鳥栖入団し、2010年には同じJ2の横浜FCに移籍した。その後2014年にはJ1の川崎フロンターレに移籍して5シーズン活躍する。2019年ヴァンフォーレ甲府、2020年レノファ山口を経て引退した。現在は「セルソース株式会社」に勤務中。

武岡 優斗|セルソース株式会社

PROFILE

武岡 優斗|セルソース株式会社 yuto_takeoka

武岡優斗(たけおか・ゆうと)1986年6月24日、京都府出身 スピードを生かした縦への突破を武器に2009年J2のサガン鳥栖入団し、2010年には同じJ2の横浜FCに移籍した。その後2014年にはJ1の川崎フロンターレに移籍して5シーズン活躍する。2019年ヴァンフォーレ甲府、2020年レノファ山口を経て引退した。現在は「セルソース株式会社」に勤務中。

——現在働いている「セルソース株式会社」の業務内容を教えてもらえますか??

はい。再生医療関連事業です。セルソースが提供する加工受託サービス「PFC-FD™」を用いた療法を希望する人が医療機関で採血した血液を弊社に送ってもらいます。その血液からPRP(Platelet Rich Plasma:多血小板血漿)を抽出し、さらに無細胞化しフリーズドライ加工して病院に戻すというのが業務内容です。

——現役時代から「PRP」は知っていたのですか

「PRP」という言葉は知っていました。治療法の一つだという認識でしたね。ドーピングには該当しないので、チームメイトには経験した選手もいました。ただ、自分自身では「PRP」を経験することなく現役を終えました。

——入社後はどんな業務を担当しましたか

最初は営業部に所属して整形外科の先生を訪問し、紹介していました。ドクターにはスポーツ好きな先生が多いので、元選手ということで好意的に受け取っていただいたと思います。

それからスポーツチームに治療の一環として「PFC-FD™」を導入してもらうという仕事とともに「PFC-FD™」を経験した選手の話を聞いて、その内容を発信するという業務も行いました。その後、経営企画部に異動になり、スポーツチームのアフターフォローがメインの仕事になっています。

——情報発信もやっていたのですね

はい、自分でライティングをやっています。自分だからこそ引き出せた話というのがあるので、そこを書くようにしています。選手だったので、ユーザーの目線というのも取り入れられていると思います。ただ、最初は上司に見せたら赤字の修正だらけになってしまいましたね(笑)。

——他の人たちとの業務内容の違いはありますか

通常の営業は医療機関に行くのですが、僕はもう1人いる元アスリートの女性と一緒にスポーツチームを回っています。訪問先が自分のことを知ってくれているので、12年間の現役生活が役立っていると思います。

——自分の特長はどう出していますか

現役時代はケガと痛みに苦しんでいました。両膝で4度の手術を経験し膝が痛かったので、毎朝、ベッドから起きるときの一歩がすごく気になっていたのです。踏み出したときに痛いとそれだけで気持ちが萎えてしまっていました。

痛みがないことのありがたさは他の人よりも知っているのではないかと思っています。痛みとともに生活するという辛さと、引退するときに少しでも痛みのない状態でその日を迎えられることの大切さを知っていて、その改善の手伝いができる意味を分かっていることが、僕がこの仕事をしている意義だと思っています。

——引退後、「セルソース株式会社」に入社したきっかけは?

正直に言えば、引退したときはその後のことを何も決めていませんでした。そこで知人から紹介された人材派遣会社の人に「やりたいことを見つけたいからいろんな人と話をさせてほしい」とお願いして、たくさんの人に会う中で将来を決めようと思っていました。

そして何人かの方とお会いすることができました。ただ単に話をするだけと思っていたので相手の会社や業界の事前調査をしていなかったのですが、どれも就職のための面接でした。ありがたいことに妻がしっかり調べておいてくれたので、対応することができました。

それでも実際のところいろいろな知識不足は否めませんでした。ですから「セルソース株式会社」の方と面談したときは、正直に「これまでサッカーを軸にすべての選択肢を決めてきましたが、引退して何もわからない状態でここに来ています」と話しました。

そして「ただ、膝のケガを4回して、痛みとともに10数年生きてきたので、誰よりも膝の痛みに関しての気持ちは分かります」と伝えたところ、運良く入社する運びとなりました。

——入社してみて思ったことは?

現役時代に苦しんだ経験を生かして、いろんな人を助けたりサポートしたりできるというのを実感しているところです。

——現役時代にやっておけばよかったと思うことはありますか

社会人になるとパソコンのスキルがすぐに要求されます。ですから、エクセル、ワード、パワーポイントなんかは学んでおけばよかったと思います。その一方で、現役時代はそういうビジネスで使うソフトを使ってなにかするということはありませんから、学んでも何に使えばいいのだろうと思うことはあります。

——会社員になったことで、育児休暇も取れるようになったと思います。現役時代と何か感覚は変わりましたか

やっぱり現役選手に勝る刺激はないと思います。たとえば国立競技場で5万人の観衆の目を集めてプレーするなんてことはもうありません。だから逆にサポーターのみなさんが週末スタジアムに通う気持ちがわかるようになりました。

——この業界に元選手は向いていると思いますか?

アスリートであったことと次のステージで活躍できることは、決してイコールではないと思います。もちろんアスリートにはリバウンドメンタリティがあります。それでも「サッカーをやって楽しい」という気持ちを、「この仕事をやって楽しい」というように置き換えられるかどうかが重要でしょう。置き換えられた人は活躍できると思います。

現役時代に引退後を考えてビジネスを始める必要はないと思いますが、最低限、自分の興味のある分野は見つけておいたほうがいいでしょう。「これはおもしろそうだ」ということを探しておくのは、とても大事ですね。

※PFC-FDはセルソース株式会社の保有する商標です。